ドミナントセブンスコードから、トニックコードへ進行する流れを、ドミナントモーションと言い、コード進行に強い連結力を生み出せます。楽曲では大抵使われている、ドミナントモーションが起こるには、主に二つの要因があるので、それらを順番に見ていきましょう。

強進行とルートモーション

G音からC音への強進行
G音からC音への強進行のTAB小節

強進行の流れ方

例えば左小節のように、4弦3フレットのG音を鳴らすと、3弦3フレットのC音へ、進行したがります。右小節のように、2弦5フレットのG音を鳴らすと、1弦5フレットのC音へ、進行したがりますが、同時に3弦3フレットのC音へも、進行したがります。これを強進行(きょうしんこう)と言います。

人間の耳が期待する

進行したがると書きましたが、人間の耳がそれを最も期待する、という事を音楽学校で、教えてもらった記憶があります。なので、犬や猫の他の動物なら、違う音を期待するかもしれません。

強進行順のルートモーション
強進行順のルートモーションのTAB小節

ルートモーション

コード進行時のベースの動きをルートモーションと言います。最も強いのは先程も説明した、完全4度上行か完全5度下行で、順番に少しずつ弱まっていきます。もちろん、ベースラインにも適応できますが、聞こえ方には個人差があるので、ベースラインを崩してまで、意識する必要はないでしょう。

ドミナントモーション(メジャーキー)

Cメジャーキーのダイアトニックコード(三和音)
Cメジャーキーのダイアトニックコード(三和音)表

強進行だけでは力不足

Cメジャーキーを例に挙げると、DであるGは強進行も手伝って、TのCへと進行したがります。しかし、これだけでは力不足で、その進行力はそれほど強くありません。

TSD

Sも含めたDTの詳細は、主要三和音と代理和音を御覧ください。

Cメジャーキーのダイアトニックコード(ドミナントコードのみ四和音)
Cメジャーキーのダイアトニックコード(ドミナントコードのみ四和音)表

ドミナントモーション発生

Dのみセブンス系の四和音、G7にしてみました。これでドミナントモーションが発生し、Tへと流れる力が強くなります。これはG7に含まれる、2つの音程がそうさせるのですが、詳しい音の流れを、同じくG7とCで見ていきます。

G7からCへのドミナントモーション
G7からCへのドミナントモーションのTAB小節

減5度は不安定な音程

G7の長3度であるB音と、短7度であるF音の二音は、減5度という音程です。この減5度音程は、人間の耳には不安定で、気持ち悪いとされ、何処か落ち着ける音程を求めます。それがTというわけです。

ドミナントモーションの解決

長3度のB音が根音のC音へ、短7度のF音が長3度のE音へ移り、この流れがスッキリ気持ちよく聞こえます。そして、これをドミナントモーションで解決すると表現するので、覚えておきましょう。

三全音の反進行
三全音の反進行ピアノ図

三全音の進行方向

G7B音からF音、またはF音からB音までは、半音6つ分あります。これを全音に直すと3つなので、三全音(さんぜんおん)と言います。この三全音の二音は、同じ方向へ進行しようとせず、互いに向き合うか離れるかの、反対方向へ進行したがります。これを三全音の反進行と言います。

トライトーンと増4度

三全音を英語式でトライトーンと言うので、トライトーンの反進行とも言います。また、F音からB音までは減5度ではなく、増4度という音程ですが、同じ三全音なので、減5度と同じ効果を持ちます。

  • ドミナントコードのディグリーネーム
    ドミナントコードのディグリーネーム表
  • ドミナントセブンスコードのディグリーネーム
    ドミナントセブンスコードのディグリーネーム表

ドミナントセブンスコード

他のメジャーキーも同じで、Dは❶の三和音ではなく、❷の四和音である、ドミナントセブンスコードにすると、Tに対してドミナントモーションを、かける事が出来ます。また、Tは三和音であったり、四和音でも、色んな種類のコードになります。

ドミナントモーション(マイナーキー)

  • ナチュラルマイナーキーのディグリーネーム
    ナチュラルマイナーキーのディグリーネーム表
  • ハーモニックマイナーキーのディグリーネーム
    ナチュラルマイナーキーのディグリーネーム表
  • メロディックマイナーキーのディグリーネーム
    ナチュラルマイナーキーのディグリーネーム表

ドミナントセブンスコードを借りる

❶のナチュラルマイナーキーを基本にして、コード進行を考えると、Dはドミナントセブンスコードではないので、ドミナントモーションをかけられません。なので、❷のハーモニックマイナーキーか、❸のメロディックマイナーキーから、ドミナントセブンスコードを借りる、という考え方をしましょう。

  • Em7からAm7のコード進行
    Em7からAm7のコード進行TAB小節
  • E7からAm7のドミナントモーション
    E7からAm7のドミナントモーションTAB小節

E7の減5度音程

❹のEm7からAm7も決して、不自然な流れではありませんが、ドミナントモーションを作りたいなら、❺のE7にします。E7の長3度のG#音と短7度のD音が、三全音の減5度音程です。これらがそれぞれAm7の、根音のA音と短3度のC音へと流れ、ドミナントモーションで解決しています。

音の流れが少し違う

メジャーキーのドミナントモーションは、減5度音程が半音と半音で移行し、解決するのに対して、マイナーキーのドミナントモーションは、減5度音程が半音と全音で移行し、解決しています。

ドミナントモーション(和音)

G7のポジション
G7のポジション指板図

完全5度は省いても良い

ベースでドミナントセブンスコードの、和音を作る場合ですが、やはり減5度(増4度)を作る、長3度の長3度の略記号と短7度の短7度の略記号が必須です。最低限それら二音でも良いですが、根音の根音の略記号もあれば、心強い感じです。残りの完全5度である完全5度の略記号ですが、和音に影響が少ないので、省かれる事が多いです。

G7のコード弾き
G7のコード弾きTAB譜

フレット移動で使える

左小節に見られるG7が恐らく、最も多く使われるポジションかと思います。そこから一音だけオクターブ上げた、右小節のポジションもよく使われます。そしてこれらのポジションは、そのままフレット移動してやれば、ルート違いのドミナントセブンスコードが作れます。

高音を意識する

ベースで和音を作る場合、出来るだけ高音域のフレットにすると、聞き取り易くなるはずです。またベースの音自体も、高音を大きめ(低音を小さめ)に設定すると、聞き取り易い和音になります。

  • E7
  • A7
  • E7のポジション
    E7のポジション指板図
  • A7のポジション
    A7のポジション指板図

開放弦が使える場合

開放弦が構成音に含まれる、E7やA7の場合、押弦はもっと楽になります。よくあるのは、43弦の開放で根音の略記号を鳴らし、12弦で長3度の略記号短7度の略記号を鳴らす、という組み合わせです。これはドミナントセブンスコードに限らず、他種のコード弾きでも効果的なので、覚えておくと良いでしょう。

E7とA7のコード弾き
E7とA7のコード弾きTAB譜

フィンガーピッキングも自由

フィンガーピッキングには記号があり、Pが親指、iが人差し指、mが中指、aが薬指です。上記の和音弾きの場合、私はこのようになりますが、ハモらせる事が出来れば、どの弦に何の指を使おうと自由です。恐らく右小節で見られる、Pimの組合せが、最も使い易いかと思います。

ドミナントモーションの練習

ベースの和音弾き練習譜面(Cメジャーキー)
ベースの和音弾き練習譜面(Cメジャーキー)4小節

コード弾きも複数

ドミナントモーションを含めた、ベースによる和音弾きを、練習してみましょう。そう多くはありませんが、コードの押さえ方も複数あるので、上記とは異なる弾き方も出来ます。ここでも全てのコードで、完全5度の略記号を省いていますが、もちろん鳴らしても構いません。

正確な音符ではない

4小節目のG7ですが、音符の長さ的にはハモらせず、一音ずつ鳴らすのが正しいです。しかし、スライドから後の音は、ハモらせて弾いてください。

ベースの和音弾き練習譜面(Eメジャーキー)
ベースの和音弾き練習譜面(Eメジャーキー)4小節

ドミナントセブンスコードで終わる

ブルースに多いのですが、トニックコードがドミナントセブンスコード、という曲もあります。上記もE7で終わっており、不安定なままのコードで終わっています。最初はスッキリしない終わり方、と思えてしまいますが、慣れれば格好よくさえ、感じられると思います。

記事終了
このページのまとめ
  • ドミナントモーションには、ドミナントセブンスコードが必要。
  • 長3度と短7度の減5度(増4度)の、不安定な音程が、ドミナントモーションの起因。
  • ベースの和音弾きでも、ドミナントモーションを作れる。