借用和音のセカンダリードミナントを使えば、ダイアトニックコードの1番目であるトニックコード以外にも、ドミナントモーションを起こす事が可能です。Cメジャーキーを例に挙げ見ていきますが、セカンダリードミナントの前に強進行(きょうしんこう)という、音の流れについても知っておきましょう。
強進行

強進行の音の流れ方
例えば4弦3フレットのG音を鳴らすと、その音は完全4度上(半音5つ上)の、3弦3フレットのC音へ進行したがります。2弦5フレットのG音を鳴らしても、完全4度上の1弦5フレットへ進行しようとしますが、同時に完全5度下(半音7つ下)の、3弦3フレットのC音へも進行したがります。
完全4度上か完全5度下が最強
強進行をコードに置き換えてみても、ドミナントコードがトニックコードへ進行したがるのと同じです。更にドミナントセブンスコードにしてやるとドミナントモーションも作れ、強進行と良い具合に効果が重なります。他にも強進行という音の流れはありますが、最も強いのは完全4度上か完全5度下です。
弱進行もある
強進行の真逆である弱進行もあります。
セカンダリードミナント①

CM7以外にもドミナントモーション
Cメジャーキーを例に挙げると、D(ドミナントコード)のG7から、T(トニックコード)のCM7にだけドミナントモーションが起こせます。しかし、セカンダリードミナントを利用すれば、Dm7・Em7・FM7・G7・Am7に対してもドミナントモーションを起こせます。
仮のトニックコードにする
CメジャーキーではTはCM7ですが、Dm7・Em7・FM7・G7・Am7にセカンダリードミナントをかける場合、それらのコードを仮のTとして考えます。先ずはマイナー系のDm7・Em7・Am7の、セカンダリードミナントを考えてみましょう。

セカンダリードミナントにならない
Dm7・Em7・Am7を仮のTにしてやると、上記のナチュラルマイナーキーが作れます。その時のDはAm7・Bm7・Em7で、それでもTへ進行しようとはしますが、ドミナントモーションではないので、セカンダリードミナントにもなりません。なので、次のようにコードを変更してやります。

ドミナントセブンスコードにする
何も難しい事はではなく単純に、DをA7・B7・E7のドミナントセブンスコードにしてやります。これでTにドミナントモーションをかけられるので、Cメジャーキーのセカンダリードミナントになります。簡単なコード進行で、セカンダリードミナントを見てみましょう。
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セカンダリードミナントなし(Cメジャーキー) -
セカンダリードミナントあり(Cメジャーキー)
セカンダリードミナントの多用に注意
①は7・8小節目のG7からCM7へ、ドミナントモーションだけかかっています。そこに2・4・6小節目のDm7・Em7・Am7へ、セカンダリードミナントをかけてやったのが②です。こうしてやると、コードの繋がりが強いものになるのですが、セカンダリードミナントの多用は余り良い事ではありません。
セカンダリードミナントは転調
転調(てんちょう)とは曲のキーが変わる事ですが、セカンダリードミナントは瞬間的に転調を起こします。上記の8小節ならE7はAマイナーキーの、A7はDマイナーキーの、B7はEマイナーキーのTへ進行します。基はCメジャーキーの曲なのに、どのキーなのか分からなく不安定になる恐れもあります。
二次的ドミナントと副七の和音
本来のドミナントコードに対して、セカンダリードミナントは二次的ドミナントとも言われます。また、セカンダリードミナントの和名は、副七の和音(ふくしちのわおん)です。
セカンダリードミナント②

FM7とG7のセカンダリードミナント
今度は4番目のFM7と5番目のG7に対する、セカンダリードミナントを考えていきましょう。本来のDであるG7に対するセカンダリードミナント、というと難しく思いますが考え方は同じです。先ずはFM7とG7を仮のTとする、ダイアトニックコードを見ていきましょう。

トニックコードの種類
GメジャーキーのTがGM7となっていますが、これはG7と同じだと思ってください。Tになるのは1種類のコードだけではなく、G・GM7・G7・G6等があります。これはマイナー系のコードがTになった場合も同じです。セカンダリードミナントを使った、簡単なコード進行を見てみましょう。
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セカンダリードミナント(Cメジャーキー) -
ダブルドミナント or ドッペルドミナント(Cメジャーキー)
ダブルドミナント(ドッペルドミナント)
①は2~3小節目がセカンダリードミナント、7~8小節目がドミナントモーションです。②は7小節目のG7に対するセカンダリードミナントのD7があり、8小節目にかけて2回のドミナントモーションが起こっています。これをダブルドミナント(ドッペルドミナント)と言い、強いコードの連結が作れます。
ダブルはドッペル
ダブルは馴染みのある英語ですが、ドッペルはドイツ語です。
セカンダリードミナント③

セカンダリードミナントと♭5
最後は7番目に作られるBm7(♭5)ですが、これにセカンダリードミナントを使う事は少ないです。理由を簡単に説明すると、♭5が入っている為にコードの色が明確でないからです。それでも以下の表に示す通り、Bm7(♭5)に対するセカンダリードミナントを作る事もあります。

セカンダリードミナントの効果が薄い
Bm7(♭5)をTとするマイナーキーはないので、Bm7を仮のTと考えます。そうすると、Dは5度をアレンジしたF#7となります。このように、Bm7(♭5)のセカンダリードミナントはF#7ですが、Bm7(♭5)は♭5を持つため、セカンダリードミナントの効果は薄いです。

#5もセカンダリードミナントを使い辛い
上記はマイナーキー3種類のディグリーネーム表で、同じく黄色で示すコードにセカンダリードミナントを使っても効果が薄いとされています。これを見てみると♭5だけでなく#5を持つコードも、セカンダリードミナントを使い辛いというのが分かります。
音楽理論を無視しても良い
セカンダリードミナントを使い辛いコードというのは、あくまで音楽理論上の事なので、それを無視してコード進行を考えても全く問題ありません。

- 強進行は最も自然な音の流れ方。
- セカンダリードミナントはT以外にかかるドミナントモーション。
- セカンダリードミナントの効果が薄いコードもある。