音楽の授業などでシャープやフラットという言葉を、一度は聞いたことがあるかと思います。音に変化が加えられる音楽記号なのですが、シャープとフラットを知る前に指板図を使い、音と音の距離について考えてみましょう。
半音と全音の音程
低い音と高い音には距離が生まれ、その距離のことを音程(おんてい)と言います。近い音程もあれば遠い音程もあり、それら音程によって色んな呼び方がありますが、まずは次の二つから覚えていきましょう。

半音はフレット1つ分
指板図にもあるように、3弦2フレットの「B」から、3弦3フレットの「C」までのような、フレットの隣り合う音程を半音(はんおん)と言います。「B」から半音上がると「C」になり、逆に「C」から半音下がると「B」になるという表現が出来ます。
全音はフレット2つ分
半音の倍に相当する音程を全音(ぜんおん)と言います。指板図にも記してあるように、「F」から「G」までのような音程が全音です。2弦5フレットの「G」から全音下がると、2弦3フレットの「F」、というような言い方が出来ます。半音はフレット1つ分上がり下がりし、全音はフレット2つ分上がり下がりする分けです。
異名同音のフレット
半音と全音の音程については、分かってもらえたと思います。特に半音の音程が理解できていれば、シャープとフラットに対しての変化も、直ぐに分かるはずです。そして、シャープとフラットを使った、音名の少し不思議な現象を知っておいてください。

シャープは「♯」で半音上がる
指板のフレットにはそれぞれ音名がありましたが、空白になっているフレットにも呼び方があります。先ずは半音上がるシャープを使った表現を、上の指板図を例にして見ていきましょう。シャープは音楽記号で「♯」と表されます。
- 「●」は4弦1フレットの「F」から見ると半音上がった「F♯」
- 「●」は3弦0フレットの「A」から見ると半音上がった「A♯」
- 「●」は2弦5フレットの「G」から見ると半音上がった「G♯」
- 「●」は1弦7フレットの「D」から見ると半音上がった「D♯」

フラットは「♭」で半音下がる
次も同じ指板図の、同じポジションで説明していきますが、違う呼び方で表現してみましょう。今度は半音下がるフラットを使った表現です。基準になる音が違うと、呼び方も違ってくるというのに注目してください。フラットは音楽記号で「♭」と表します。
- 「●」は4弦3フレットの「G」から見ると半音下がった「G♭」
- 「●」は3弦2フレットの「B」から見ると半音下がった「B♭」
- 「●」は2弦7フレットの「A」から見ると半音下がった「A♭」
- 「●」は1弦9フレットの「E」から見ると半音下がった「E♭」
異名同音は同じ高さの音
このように指板図に示した「●●●●」のポジションは、♯と♭を使って違う呼び方が出来る分けです。呼び方こそちがいますが、同じフレットを押さえるので、当然音の高さも同じです。このような音を異名同音(いみょうどうおん)と言います。これら4つ以外にも異名同音のフレットはあるので、確認しておいてください。因みに、異名同音は「いめいどうおん」とも言います。
臨時記号の種類
説明してきた♯や♭は臨時記号(りんじきごう)と言われる音楽記号で、譜面の音符に使われます。また、臨時記号は♯と♭だけではなく、他にも種類があります。音符だけではなく、TAB譜面と一緒に見ていくと分かりやすいと思います。

ナチュラルは元の音符に戻る
1小節目は3弦3フレットから始まり、2拍目の音符に♯が付いているので、半音上がった3弦4フレットになっているのが分かります。3拍目の音符には♯がありませんが、そのまま効果が続くというのが決まりごとです。4拍目の「▲」の音符にはナチュラルという臨時記号が付いてあり、ナチュラルは元の音符に戻るという意味があります。
2小節目は4弦5フレットから始まり、2拍目の音符に♭が付き、半音下がった4弦4フレットになっています。3拍目の音符には♭は付いてませんが、これも同じように効果は続きます。4拍目の音符にナチュラルが付いているので、4弦5フレットの本来の音の高さに戻っているのが分かります。

ダブルシャープはシャープ2つ分
1小節目の3拍目の「▲」の音符には、バツ印のような記号があります。これはダブルシャープという臨時記号で、シャープが2つ分という意味です。1・2拍目の3弦3フレットだった音符が、3拍目のダブルシャープによって半音2つ分上がり、3弦5フレットになっているのが分かります。
臨時記号の効果
1小節目の4拍目の音符は、ダブルシャープの記号がありません。先ほども少し触れましたが、特に何も指示がなければ、臨時記号の効果は持続するので、1小節目の4拍目も3弦5フレットのままです。続いて2小節目の1拍目も同じ音符ですが、TAB譜面では3弦3フレットに戻っています。これは臨時記号の効果は小節内だけで有効というルールがあり、小節が変われば効果は消えてしまいます。なので、2小節目の1拍目は3弦3フレットになっている分けです。しかし、カッコ付きのナチュラルで元の音に戻ったことを、教えている親切丁寧な譜面もよく見られます。
ダブルフラットはフラット2つ分
2小節目の3拍目の「▲」の音符には、フラットが2つ付いているのが分かります。これはダブルフラットという臨時記号で、見た目のようにフラットが2つ分という意味です。3弦3フレットだった音符がダブルフラットで、半音2つ分下がり3弦1フレットになっています。

TAB譜面は臨時記号に影響されない
音符に臨時記号が付くとややこしいですが、TAB譜面を読むのに関しては意識しなくても大丈夫です。「▲」の音符には♭が付いているので、1フレットから半音下がり0フレットにしたりだとか、「▲」の音符には♯があるので、4フレットから半音上げて5フレットをなどと、考えながら弾く必要はありません。音符にシャープやフラットが付いても、TAB譜面に記された数字は、既に半音上げ下げしてある状態なので、何も考えずそのまま弾きましょう。